刑事訴訟における証拠[ソースを編集]
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証拠の位置付け
刑事訴訟法には、事実の認定は証拠による旨の明文がある(同法317条、証拠裁判主義)。したがって、犯罪事実を認定するためには、証拠能力を備えた証拠について、法定の証拠調べ手続を踏まなければならない(証拠能力があり、かつ法定の証拠調べ手続を経た証拠による証明を、厳格な証明という)。
また、証拠能力についても、後述のような厳格な制限がある。
証拠の種類
刑事訴訟法上、証拠方法として、証拠書類、証拠物、人証(証人、鑑定人)があり、それぞれ証拠調べの方法が定められている。
- 証拠書類の取調べ
- 証拠書類の取調べは、朗読による(刑事訴訟法305条)。ただし、裁判長は、相当と認めるときは、朗読に代えて、要旨の告知を行わせることができる(刑事訴訟規則203条の2)。現在、刑事訴訟の実務では多くが要旨の告知によって行われている。
- 証拠物の取調べ
- 証拠物の取調べは、証拠物を示すこと(展示)によって行われる(刑事訴訟法306条)。
- 証人尋問
- 証人を取り調べる証拠調べが、証人尋問である(刑事訴訟法304条)。
- 鑑定人尋問
- 鑑定人が口頭で鑑定結果を報告することを鑑定人尋問という。鑑定人尋問については、証人尋問の規定が準用される(刑事訴訟法171条)。
- 被告人質問
- 被告人は黙秘権を有するが(刑事訴訟法311条1項)、任意に供述したときは、その供述は、被告人に有利・不利を問わず証拠資料となる。
証拠能力の制限
刑事訴訟法においては、証拠能力(証拠となり得る資格)が厳格に制限されている。
証拠能力が認められるためには、(1)自然的関連性があること、(2)法律的関連性があること、(3)証拠禁止に当たらないことが必要である。法律的関連性については、刑事訴訟法上、自白法則と伝聞法則という重要な原則が設けられている。また、証拠禁止の例が、違法収集証拠排除法則である。
- 自然的関連性
- 被告人の悪性格、前科、余罪の存在等は、犯罪事実との関連性がないから、これらに基づいて犯罪事実を認定することはできない。
- 自白法則
- 自白は最も重要な証拠であるが、同時に冤罪を生む危険な証拠でもあることから、その証拠能力が制限されている。
- すなわち、憲法38条2項は、「強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることはできない。」としており、この憲法の規定を受けて、刑事訴訟法319条1項も、「強制、拷問若しくは脅迫による自白、不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白その他任意にされたものでない疑のある自白は、これを証拠とすることはできない。」と規定している。
- なお、証拠能力に関する原則ではないが、自白の証明力に関して、被告人は、自己に不利益な唯一の証拠が被告人の自白である場合には、有罪とされないとの補強法則がある(憲法38条第3項、刑事訴訟法319条2項、3項)。
- 伝聞法則
- 被告人の反対尋問権(憲法37条2項)の保障及び実体的真実発見のため、伝聞証拠も排斥される。
- すなわち、公判期日における供述に代えて書面を証拠とし、又は公判期日外における他の者の供述を内容とする供述を証拠とすることは、原則としてできない(刑事訴訟法320条1項)。
- 違法収集証拠排除法則
- 以上のように明文の規定があるもののほか、違法に収集された証拠物の証拠能力を否定するのが判例・通説である(違法収集証拠排除法則)。